20年ほど前、時折藁灰釉を使った作品を作っていた。
主に手間暇をかける壺や花器に、この釉薬を使って重厚な雰囲気に仕上げていた。当然価格も他の作品より何割も高くなってしまっていた。
歩留まりの悪さ(失敗の確率が高い)から次第に作らなくなって久しいが、昨年あたりから茶碗や酒器などの小物をこの藁灰釉で表現する作品に再び取り組んでいる。
藁灰釉の主成分はその名の通り、藁を燃した灰。これに長石などを配合して作るのだが、藁を燃すと一口に言っても最近は農家と交渉しようにもなかなか応じてもらえない。一年前にあった山火事も影響して、野焼きをすることもはばかられるようになっている。結局、原料屋さんから購入することになるが、ほかの原料に比べると価格がかなりする。さらにこの釉薬はたっぷり厚くかけることでその良さが得られるものだから、手間暇かけて調合した釉薬があっという間になくなってゆく。
それでもこの釉薬にこだわるのは、うまくいった時のそのたまらない魅力のせいだ。20年前と違って今は黒御影土に藁灰釉をたっぷりと掛けることで新たな魅力ある器ができるようになった。ひとつひとつ表情が違って面白いのだが、なかなかそろわないのが玉に瑕。